神勅の基本的考え方は右記事参照⇒ 「五大神勅ー日本の礎ー 総論及び①天壌無窮の神勅」

「3」斎庭稲穂の神勅
吾(あ)が高天原(たかまのはら)に所御(きこしめ)す斎庭(ゆにわ)の穂(いなほ)を以て、亦(また)吾(あ)が児(みこ)に御(まか)せまつるべし。
意味:高天原にあるわたしくしの治める神聖なる稲穂をわたくしの子孫に任せようと思う。
大変短い文章ですが、日本神話で窺い知る重大な天照大御神の御神意です。
神勅の解釈と保食神の神話
それではここでこの神勅に関連する日本書紀の神話を紹介しておきたいと思います。
ある時、天照大御神が保食神(ウケモチノカミ)と言う神様が居られることをお聞きになり、 月夜見尊 (ツクヨミノミコト)に様子を見に行く様命じました。
保食神( ウケモチノカミ) は月夜見尊 (ツクヨミノミコト) を歓待するのですが、その饗応に供せられたものが、ことごとく保食神( ウケモチノカミ) の口から出てきたものだったのです。
陸に首をまわせば飯(イイ)が、海に首を回せば大小の魚が、山に首を回せば毛の荒い獣と毛の柔らかい獣が口から出てきたのです。
月夜見尊 (ツクヨミノミコト) はその様子を見て、口から出てきた汚らわしい物を供えられたと思ってしまい、 保食神を殺してしまったのです。
天照大御神はこの報告を受けて、天熊人(アメノクマヒト)を遣わし様子を視させた所、保食神の御遺体から、色々なものが芽吹いていました。
頭には牛馬、額に粟、眉に蚕、眼に稗、腹に稲、陰(ホト)には麦と小豆と大豆が生まれていたのです。
天熊人はこれを持ち帰り、天照大御神に献上したところ、天照大御神は大変お喜びになって、「地上の人々の糧となるもの」だと仰り、天邑君(アメノムラキミ)を管理者として天狭田(アメノサナダ)と長田(ナガタ)に植えられました。
因みにですが、 月夜見尊 (ツクヨミノミコト)は保食神(ウケモチノカミ) を殺したことを天照大御神に咎められ夜の世界に追放されています。
福祉的な神勅
天照大御神は稲穂を含め天熊人が持ち帰られたものを人々の為の糧を得たと喜んでおられた。
そしてその稲穂の管理を天皇に任さられています。
任されると言う事は一見、天皇が稲穂を恣にしても良いと解釈もできそうなのですが、先に見た同床共殿の神勅によって天照大御神と一体になっておられる為、天照大御神の「地上の人々の糧となるもの」と言う御神意を無下にできないのです。
これは天皇が稲穂を管理し、これを国民に食べさせて飢えさせる事のない様にしなさいと言う事になります。
テレビ等で陛下が御自身で田植えをなさる姿が印象に残っているかと思いますが、経済的事情やなんらかの原因で民間での稲作が廃れる恐れもある中、そうなった時に備えて稲作の存在や技術を継承し下さっておられます。
これがまさに管理して頂いていると言えます。
上古は、「食」の為に生きるか死ぬか差し迫った状態の時が幾度もあったと思います。
それを考えると大変福祉的な神勅である事がわかります。
この福祉的な御神意の実践と言う意味で、陛下の「お言葉」を拝聴するにつけ感じられる民安かれとの祈りは、稲穂(食)だけでなく、我々の住環境全般までご心配頂いておられると言っても良いかもしれません。
- 天壌無窮の神勅 ⇒謹解記事「五大神勅ー日本の礎ー ①天壌無窮の神勅」
- 同床共殿の神勅 ⇒謹解記事「五大神勅ー日本の礎ー ②同床共殿の神勅」
- 斎庭稲穂の神勅 ⇒謹解記事「五大神勅ー日本の礎ー ③斎庭稲穂の神勅」
- 神籬磐境の神勅 ⇒謹解記事「五大神勅ー日本の礎ー ④神籬磐境の神勅」
- 侍殿防護の神勅 ⇒謹解記事「五大神勅ー日本の礎ー ⑤侍殿防護の神勅」