
清明正直、何となく聞いたことがあると思います。数少ない神道における規範、人としての在り方を述べた基準だったりします。
この記事では、清明正直について考えて行きます。
清明正直とは
清明正直は神道が提示する最も知られた規範です。
「清く明るく正しく直く」、神道に関心を寄せる人ならば一度は聞いたことがあるかもしれません。
神社に奉職するためには階位と言う資格を取得しなければならないのですが、この規範、徳目が階位の名前に使用されています。
(清)浄階(じょうかい)
明階(めいかい)
正階(せいかい)
権正階(ごんせいかい)
直階(ちょっかい)
神道は教義として守らなければならないもの、例えば十戒の様なはっきりした行動規範示されていないのです。
神道は創唱宗教ではなく、はっきりした指導者が存在するわけではなかったからかもしれません。
孝徳天皇が百済の使者に対して述べたお言葉に「既にして民の明(あか)き直き心を国土(クニ)に懐くの風有れば」とあったり、文武天皇が即位なさる時の宣命に「明支浄支直支誠之心以而(アカきキヨきナオキきマコトのココロもちて)」とあります。
天皇と国民との関係、即ち忠誠のあり方として述べられているとも解釈できますが、これを一般的に抽象化すると下記の意味が発見できると思います。
それぞれの徳目の意味
<清浄>:
清い事、穢れていない事であるのですが、説明としてこれだけでは同義反復でぼんやりしています。
日常生活に置き換えれば、お風呂上がりのさっぱりした状態。
精神的な側面から言えば、悩み事を抱え込み過ぎて、暗くなった気持ちは無く、患いの無い軽い心持ち。
こう言う状態であると思えば分かりやすいかと思います。
神道では良く自分の中には鏡があってそれを磨いて曇りをなくす事も言われたりします。
付着物のない綺麗な鏡、そうであれば、物ごとを正しく照らし出し、映し出すこともできますね。
偏見や思い込みを取り払って物事を直視すれば余計な詮索もせずに済み、結果的に思い煩う事が無くなります。
<明るい>:
身体も心も清浄で思い煩う事が無ければ自ずと気分も明るくなります。
清々しい気持なのに暗いのはただ捻くれているのであり、逆に何か抱えているのに明るく振舞うことは空元気。
明るく元気な人は何かやってくれそうな不思議な魅力を感じますし、元気を分けてもらえますよね。
明るい挨拶をしてもらった時を想像すると良いですね(自分が不浄な(明るくない)状態で元気な挨拶をされたら、元気をもらうどころかイラっとする事がありますが受け手も明るくないと、相手の明るさを受け止められないのが不思議ですね)。
<正しい>:
正しさの基準は人によって異なるので、この徳目も大変むつかしい問題です。
常に自分の思考行動は正しいのかどうか反省は必要です。
しかしながら、自分の正しいと思える価値観は常に持っていなければ主体的な判断ができず、環境に流されて自分の立ち位置を見失うかもしれません。
どうしたいかを考える場合は、どうあるべきかを理解している事が前提条件ですので。
<直い>:
素直、ごまかさない。誠実であること。
自分に嘘をつけばいったんは苦悩から離れられることもあるでしょう。
泣きたいときに泣き、笑いたいときに笑う。結構できてないものです。
人とのコミュニケーションでも嘘があれば息苦しくなるし、打ち解けられません。また、自分を素直に見つめられないと成長もできない。
以上の様に、少し考えただけで倫理的要素を盛り込み人とはかく<あるべき論>が展開できる事がわかります。
西洋における倫理学と比べれば西洋の人たちとの<あるべき論>の共通点が見えたり、互いの特異点が浮き彫りなり面白いかもしれません。
儒教との比較においても、この徳目を考えれば、共通するところもある様に感じますがどうでしょうか。
神道は、民族宗教であって世界の人々は共有できないなんて話を耳にしますが、この徳目に限って考えたとしても、世界に通用する普遍的な概念を有していると考えます。
神道の奥義を極めた人、キリスト教の奥義を極めた人、仏教の奥義を極めた人、特定の宗教によって悟達した者が互いに話し合った時には対立ではなく、共感の連続だったりするかもしれませんね。
本記事の清明正直論をベースに「神道と「公」「私」ー清明正直再考ー」にて内容を深めています。
[…] 共同体が無いを罪と認識するのかも論点になろうかと思います。個人的に侵さざるべき倫理観には、「清明正直ー神道の倫理観ー」で述べたものがあり、公の基本として「神道と「公」「私」ー清明正直再考ー」の拙稿をご紹介したく思います。 […]
[…] 共同体が無いを罪と認識するのかも論点になろうかと思います。個人的に侵さざるべき倫理観には、「清明正直ー神道の倫理観ー」で述べたものがあり、共同体の犯さざるべき倫理観として「神道と「公」「私」ー清明正直再考ー」の拙稿が役立つかと思います。 […]